2022年８月30日放送の『マツコの知らない世界』は、パン好き必見！クロワッサンの世界。
４歳からずっと50年以上パンを食べ続けている私が、秋から食べたいクロワッサンを紹介！
番組に登場したクロワッサンの情報をまとめました。

「実はクロワッサンは秋からが旬」
湿度と気温が落ち着いてきた今が一番美味しい

元々クロワッサンはオーストリアで生まれ（ハンガリー説もあり）、マリーアントワネットがフランスに持ち込んで進化した海外のパン。

フランスと違い、日本は高温多湿の気候。クロワッサンにとって味の決め手となるバターが溶けやすく難しい･･･（特に梅雨６～８月）。
この頃、夏に長期休業するパン屋が増えており、秋からの新作クロワッサンを考えているはず！とパン好きの期待をこめて、秋からのクロワッサンを食べなきゃ損！をお伝えしました。

皆さんに知って欲しいこと
クロワッサンはパン職人の技術の結晶
だからこそ･･･
「音と美断面」を鑑賞して欲しい！

クロワッサンという言葉はひとつ！ですが、作り手によって様々なクロワッサンがあります。

製法、配合、成形の仕方、折り込みの回数、クロワッサンの層を何層にするのか、温度は何度をキープするかで、味も食感も全て変わります。そこが面白く、魅力溢れるところです。

完成までとても手間がかかり、地道な作業を重ねて丁寧に作りあげられたクロワッサンは美しく、私たちは音と断面で作り手の思いを感じることができます。

味わう瞬間ははかなくも、見て、触れて、香り、口にした音、口の中で感じる感覚と五感を楽しめるパンです。
ぜひ、磨き上げられた美断面と音を鑑賞して食べて欲しい「アート作品」です。
運命のごとく出会ったクロワッサンを音や断面を感じずに食べるなんてもったいない！

音と美断面がスゴい！
職人技が光る芸術クロワッサン２選

軽やかな音色と細かい気泡の美断面が芸術
たむらパン　東京都

たむらパン（東京 / 門前仲町）

たむらパン Tam Lapin どこにもない看板

2022年６月24日オープンのお店。
たむらパン＝場所の名前であり、たむ＋ラパン（田村夫婦ウサギ年）
自称「パンが見えないパン屋」で Instagram ではパンがない･･･と話題になっています。
無造作に並べられたハード系多めのパン、才能輝くアーティストの作品が展示され、パンとアートが融合したパン飲みもできる自由空間。

クロワッサン

奥さんが初めて田村シェフのパンがおいしいと思ったのはクロワッサン。
そのたむらパンのアイコンでもあるクロワッサンは、シェフが小麦、料理人の奥さんは空気感と、夫婦でおいしさを話し合い、何十回も試作を重ねた大切なパン。小麦をおいしく感じ、とてもシンプル。バターを足したり、ジャムを付けたり、好きなものを挟んだりと、自分が好きなように食べていいよ！のクロワッサン。名店「シニフィアシニフィエ」、北海道の「ウインザーホテル洞爺のオテルドカイザー（現在は閉店）」で長年働いた田村シェフの経験で作る引き算のパンは魅力溢れています。
このクロワッサンは1日20個の超レア。
迷子にならないよう袋にたむらパンのエンボイス、そして包み方はまるでクロワッサンのよう。パンへの大切さと私たちへの優しさを感じました。

おいしさの理由

シュチュエーションに寄り添うシンプルさ

1. 均等な層が一枚でつながる28層のつややかな飴色

2. 綺麗で細かいクモの巣のような層
3. ふんわり立ち上がった生地の層が薄く透き通っている。

国産小麦に塩、砂糖多め、四つ葉発酵無塩バター使用、それぞれの持ち味を
活かしながらも、１つの個性を突き出さないバランスが、小麦のおいしさに繋がっています。
ハラハラでもザクザクでもないサク感で食べ手のシチュエーションに寄り添うシンプルクロワッサン。

ワイルドな音色とバラのような美断面が芸術
TOLO PAN TOKYO（東京・池尻大橋）

TOLO PAN TOKYO（東京・池尻大橋）

池尻大橋徒歩１分の立地に昔ながらの商店街の雰囲気が残る場で佇むパン屋さん。

コンセプトは「安全で美味しい。普通じゃつまらない」。どの状況、環境でも、普通の材料でも美味しいパンをつくることにこだわり、試作を重ねたクロワッサンは、まさにTOLO PAN TOKYO のスペシャリテパン。
日本で１番のパン屋で、１番のクロワッサンを！！！

クロワッサン

スーパーでも買える食材で作った、日本人が好きなモチ感のクロワッサン。

バターたっぷり！日本人好みのパイ生地のような層
パイ生地に近づけるために、生地の砂糖を減らし、折る時に砂糖をふりかけ、無意識な強弱探しを楽しめる28層。

おいしさの理由

バターのためだけに作った、とことんこだわるおいしさ。

1. 外側の薄い細かい層のショリショリ食感
2. 黄色味は香りを活かすため卵なし、バターのみ
3. 膜厚の日本人好みのモチ感、たっぷりバターのミルキー感
4. 焼成時バターが溢れた底のこがしバターの香り
5. バターの品質管理（０℃）、製造過程ではバターを溶かさず一度も融点を超えないよう徹底的に管理している。
6. １個のクロワッサンに様々な食感と味の変化が楽しめるのは全てのコントラスト作り（五味五感）があってこそ、もう１個食べたいと思わせるクロワッサン。

今、クロワッサン業界で沸騰中！
愛知 vs 関西
それぞれの土地の食文化を活かしたクロワッサンが！

［東京］パンの流行発信地
［京都］日本人初のフランスパン留学した進々堂や小さな個性派多くパンの王国
［大阪］粉もん文化
［神戸］西洋からパン文化をいち早く入れた地
［愛知］喫茶店王国でパンメーカーの激戦区
それぞれの食文化を活かしたクロワッサンが生まれています。

愛知には連日行列の惣菜からスイーツまで20種類以上そろえた専門店が2021年オープン。

Joli Croissant

様々な形のクロワッサンで、私たちを楽しませてくれます。

個性派クロワッサン

手土産にいかが？ういろうワッサン

銘菓ういろうをクロワッサンに挟んだ「ういろうワッサン」が、名古屋駅で購入できます。

京都には人気の「ししゃもクロワッサン」

京都には人気の「ししゃもクロワッサン」があり、忙しい時につまめるパンスタイル。
このように、地域色のある新しいクロワッサンが生まれている今を探ってみました。

クロワッサンの近代史

クロワッサン近代史

［1683年］オーストリアで発祥（ハンガリー説もあり）
［1951年］ドンクが全国展開し普及
［2005年］クロワッサンお土産ブーム
［2013年］第１次ハイブリッドブーム
［2015年］高級ブーム
［現　在］第２次ハイブリッドブーム

神戸三宮から全国拡大したことで、フランス式の本格クロワッサンが広まりました。

お土産ブームは、サンマルクカフェのチョコクロが大ヒットしたことがきっかけと思われます。

第１次ハイブリッドクロワッサンは、ニューヨークからやってきた「クロワッサンプレッツェル」。
今までにない！新しい掛け合わせを食べたくて、大阪梅田店は連日行列に。私も並びました。

西麻布メゾン・ランドゥメンヌ、ジョエル・ロブションの高級クロワッサン

その後、西麻布メゾン・ランドゥメンヌ、ジョエル・ロブションが高級クロワッサンを生み出しました。

ジョエル・ロブションのクロワッサン

現在も大阪、神戸で、第２次ハイブリッドクロワッサンブームを巻き起こしそうな、概念にとらわれない日本人好みのクロワッサンが続々と誕生しています。
番組では、その中でも常識を覆す製法のクロワッサンをご紹介しました。

ぜひ食べてほしい！
常識を覆す製法のクロワッサン２選

常識を覆す蒸し焼き製法
KÖLN「クロワッサン✖ベーグル」（神戸）

KÖLN（ケルン / 神戸）

クロワッサンベーグル

創業76年。神戸「ケルン」の三代目・壷井豪さんが８年前に考案。

おいしさの理由

クロワッサン×ベーグルの花びらのようなハイブリッドクロワッサン

1. クロワッサンよりも折り数を減らしている（４つ折×２つ折の８層）
2. バターの香りそのまま、もちもち感の新食感が加わる工夫
3. それぞれのよいところをバランス良く活かすため、時間をかけて蒸し焼き

冬期限定のクロワッサン
ル・シュプレーム「クロアゾンアンヴェルセ」（愛知）

ル・シュプレーム（愛知）

クロアソンアンヴェルセ 238円

おいしさの理由

バターを通常の1.5倍使うため、温度管理が難しく、夏場は溶けて作れない冬期限定クロワッサン。

1. 逆折製法。お菓子のパイ製法の１種。クロワッサンの折りが生地をバターで包む逆製法。外側がバターの層になるため、より香りが強く香ばしい。
2. クロワッサンコンテストで優勝したクロワッサン。
3. バターが外側、量多めのため、油っぽくならないよう、折を28層から36層に増やし、バター層を薄くしている。

ホテルの威信をかけて作る朝食クロワッサン

50年以上食べてきて気がついたこと
クロワッサンの命は「バターのなじみ度合い」
最高のタイミングで出てくるのが「ホテル朝食」

クロワッサンが最も美味しくなるのは、「バターが完璧に染みこんだタイミング」
「サクッとした外側、しっとりした内側の食感」も楽しむには、冷め立て！
その後は、水分を吸い徐々にサクサクした食感が失うので、できるだけ早く食べるのがおすすめです。クロワッサンをベストなタイミングで出してくれる場所が「ホテルの朝食」。
コロナの影響もあり、クロワッサンの外注スタイルが増えている今、あえて、ホテル内でこだわって作り上げるところもあります。
ここでは、最高の状態で食べられるホテル朝食クロワッサンをご紹介しました。

ホテルで発酵させる伝説のクロワッサン
ホテルインディゴ犬山有楽苑（愛知）

ホテルインディゴ犬山有楽苑（愛知）

ホテルインディゴ犬山有楽苑は、今年３月誕生したばかり

おいしさの理由

東京で、１日2,500個以上の販売記録があるパリ発人気ベーカリー「ゴントランシェリエ」のクロワッサンを仕入れています。
このクロワッサンは「美しすぎるクロワッサン」と言われているほど。

1. 生の状態で仕入れ、ホテルで発酵させ、朝食のみ焼きたてを提供
2. 水鏡に映る国宝・犬山城、最高のロケーションで宿泊のみの贅沢体験
3. オリジナル配合の小麦粉や、ノルマンディー産のバターを使った上質なクロワッサン。

総料理長がフランス人で、フランスの味を実現したくこだわったそうです。
日本では青山しかない「ゴントランシェリエ」のクロワッサンが、おいしいタイミングで愛知でも食べられます。

18時間寝かせたバターの芳醇な香り
アマン東京

アマン東京（東京 / 大手町）

クロワッサン 300円

おいしさの理由

1. 「素材に敬意を払い、その良さを活かすことを大切にしたい」という宮川シェフの思想とアマン独自の「自然を尊重する」コンセプトの重なったメッセージ
2. パンプリーバター（AOC 認定発酵バター）の風味を飛ばさないように焼き上げ調整している。

※パンプリーバター

フランスでは様々な地域で様々な特徴を持ったバターが製造されていますが、AOCに認定されているバターは、「エシレ」、「レスキュール」、「イズニー」、「セーブル」とこの「パンプリー」の５つのみ。
パンプリーのバターは AOC に定められた通り、ポワトゥーシャラン産のミルクのみを使って作られています。

前日のお昼頃から生地の準備を始め、冷蔵庫で寝かして当日の朝５時から６時くらいに焼き上げ、７時オープンに合わせてバターなじみも計算されています。
クロワッサンの予約はWEBにて３日前までとなります。

※本記事に掲載されている情報は2022年８月時点のもので、現在の情報と異なる場合があります。

クロワッサンの世界、いかがでしたか。
わたしは、話題のパンがあると聞けば、全国各地あちらこちらへ飛んでいきます。
次々オープンするパン屋、とどまるところがないパンへの情熱は、歳をとってもますます高まるような？
番組の収録を終えても、なぜかクロワッサン探し求めてしまっている私がいます。
以上、クロワッサンの世界でした。

石臥博代